「おつきさまのにおい」がする本
必要なもの。
・めざましテレビの「今日の占いカウントダウン」
・目覚めるための熱いシャワー
・もこもこと泡だっていく洗顔パウダー
・ナノイオンを出すドライヤー
・ファミマのサンドイッチ
・午後四時の板チョコ一枚
・夕食前の梅味缶チューハイ
・本皮のにおい
・ガタガタガタというミシンの音
・眠りに落ちていく瞬間
以上、今、ぱっと思いついた、私自身の日常に必要なもの。
この物語の始まりも、主人公の「必要なもの」の羅列から始まります。
・カエルの鳴き声(大合唱に限る)
・裏山を吹く風
・欠け始めた月
・ほうじ茶を沸かす儀式・・・
例を挙げただけでも、この物語ののんびりとした田舎の風景が
思い浮かびませんか?
ある夫婦の、スローライフな生活と、ゆかいな仲間たち。
それは、物語の中のことなのに、嫉妬さえ覚えてしまうくらい、
自分には未体験の世界でした。
だって、
「飛行機がさよならをいう音」(引用)
なんて、気にしたことないのですから。
余計なものが何もない分、逆に神経が研ぎ澄まされて、
自分にとって本当に「必要なもの」が見えてくるのかも
しれません。
必要なもの。
・おつきさまのにおい。
そんな風に思える土地に暮らしてみたいな、なんて
思わせる本なのでした。